誰もが幼い頃食べたであろうグラタン。
ぐる娘 長谷川史織にとってのグラタンは、もはや食べ物ではない。
「ライフパートナーですね。普通に考えてこれから働きつづけて食べるじゃないですか、子供ができて食べさせるじゃないですか、成長してご老人になった時にまたたべるかなぁって思って。なくてはならない。」
グラタンと共に人生を歩む女の子、はせしお。
彼女と共に覚王山のJi.Cooへ訪れる。
お目当てのグラタンは「サーモン、カボチャ、ほうれん草の豆乳きのこクリームグラタン♯パン付」
「いいですね。(外からグラタンの中身が) 何も見えないところがいいですね。」
興奮している。明らかに。数多のグラタンを食破してきた彼女にとって、もはや外見の美しさなど無用なのだろう。好きなものを前に期待が高まっている。
「カボチャ!?」
「好きー結構熱い!おいしい!」
恋する女の子のように、一口ごとに言葉が弾んでゆく。
「今まで食べた中では初めて出会いましたやつです!」
「基本的に色々アレンジできる所がいいですね。それこそ大人用にも子供用にもできるし、大学生になってこういうグラタンとも出逢って。どんどん幅が広がって好きになっていったので、ずっと飽きずに付き合っていけるかな。」
将来どうグラタンと共に過ごしていくかをも思わせる口ぶり…もはや愛である。グラタンは基本的に家やカフェで一人で食べるとのこと。グラタンと彼女が相対している際に、他の者は邪魔でしかないのであろう。
最後の一口について聞いてみる。
「悲しいですよやっぱり。もう出会えないかもしれないんですよこのグラタンとは!一期一会ですから。」
美味しいものを食べた幸せと、美味しいものと別れる悲しみの入り混じった中で、その ω な口元に最後の一口は吸い込まれて行った。
「さよならグラタン!」
(文責:ひむ)
(写真:たくみ)